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中国で単身生活をすることになったTADAの日々の感じた事を気ままに書いてます。


by wata1150
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経営者の気持ち

我が社はオーナー会社で、株のほとんど100%を個人所有しており、従ってオーナーの言葉は神の声であり、絶対的なものである。従って多少間違ったことを言っても、誰も咎めはしないし、間違った方向にどんどん進んでゆく。これによって会社がつぶれたとしても、責任はすべてオーナーがかぶるのであるから。

“我が社はオーナー会社であると同時に同属会社である”とも言える。オーナー(董事長)の奥さんのお兄さんがGeneral Manager(総経理)であり、Assistant General Manager(副総経理)は2名いるが、一名はオーナーの実兄である。唯一、同属から外れているのがもう一名の副総経理で、台湾人である。オーナーの実兄は経理担当で財布をしっかり握っている。もう一人の台湾人は人事総務担当である。

ところで、このオーナー、一代で現在の会社を作り上げた。また香港返還時に、家族は中国と香港に分断され、兄は中国で母親と暮らし、弟は香港で父親と暮らし、そして大きくなった。彼に言わせれば、高校にもいけない貧しい暮らしであったと言う。分断され、交流が出来なくなった中国と香港で、母親や兄とは、全く会えない生活が続いた。

レストランの給仕などをして、生活の糧を得ていたと言う。しかし、そうやって稼いだお金をこつこつ貯めては、ほかの工場で生産し不良品扱いされた部品を得て、選別し、そんなものでも使えるメーカーなどに売って、わずかな利ざやを得ていたという。

こんな話は、彼はめったにはしない。自分の過去の恥部とでも思っているのかもしれない。私は決してそうは思わないのだが。そして、そんな彼が私は好きである。

そんな彼だからか、私には、彼は他人の痛みのわかる人のような気がする。そしてそれを態度に表す。中国のローカルの会社であるから、罰金制度もあれば、場合によってはクビもある。私の観点からは些細なことでも、一生懸命努力しても失敗することはある。それでも、総経理判断で罰金は取られることもある。従業員は大いにそれを嫌い、この会社を嫌がってやめる人もある。

オーナーとそのことを話したことがある。彼もやりたくないと言う。しかし、創業時代、何度もだまされ、何度も従業員に裏切られた経験があり、それでも彼はスタッフを信じようと努力してきた。結局彼が得た結論は、スタッフの育った環境、受けた教育のレベルが良くなかったということである。で、良い生活レベルの人、高度な教育を受けた人を集めたいと思った。が、小さな零細企業では誰も好んでは就職しようとは思わない。従って、ハイレベルな人を得ることは出来ず、結局以前と同様な人をスタッフとすることしか出来なかった。だから罰金も、時にはクビも仕方が無い。しかし、一生懸命に努力しての失敗は、それなりに評価し必ず何かの機会に返すこと、首にした人でも連絡は継続し、ある時期が来たら、状況によっては再雇用も検討する、と言うことを実行していると言うことである。

ところで、このオーナーはかなりの気まぐれである。過日、定例の幹部職の食事会が行われ、その場で重要事項を発表するので、特別な用件の無い人は必ず参加するようにとの通達があり、私も出席した。発表されたこととは・・・私が3人目の副総経理になる・・・と言うことであった。営業担当副総経理とのことである。確かに大分前にそんな打診があった。が、入社して6ヶ月、正社員登用から3ヶ月しかたっていないのに、また、ほかの社員たちとは満足に意思疎通さえ難しいのに、それはありえない、と思っていたので、まさに晴天の霹靂であった。

彼は、私が入社以来この短期間に何をしてきたか、会社がどう変わったかとか、いろいろとその理由を皆に説明をした。私の仕事上の相棒の一人のC君がわざわざ日本語通訳までした。まさに面映い気持ちではあったし、まだまだ改革は始まったばかりであるから、まだ十分な結果を得られたとは思っていないが、断っては彼の面子をつぶすことになるので、ありがたくお受けすることにした。

そんなわけで、今月はじめから、会社の重要取引先のTOPとの会議とかが増えて、仕事はますます繁忙を極めるようになってきた。過日一週間の休暇をとるべく、帰国したが、結局客先訪問とか、現在進めている日本連絡事務所の設立準備とか、そのための人員募集とかで忙殺され、さらに、急な広州の客先の会議で、休暇取得を断念し、中国に戻る羽目になった。

しかし、たぶんこの会社が私の生涯の最後の仕事になると思っており、かれもそれを理解してか、活躍する場を精一杯、彼なりの気持ちで提供してくれているような気がするのである。私はそれに何とか応えてゆかなくてはならないと、強く思っている。
by wata1150 | 2007-06-15 00:57 | ちょっと仕事